歯を抜かない矯正と抜く矯正
一般的に矯正治療というと、歯を抜かないといけないといったイメージがあります。
私たちの人の歯は上下左右7本ずつ、全部で28本あります(親知らずを除く)。歯は28本すべてが正しい位置に並んでいることで、初めて自然な状態といえますが、たった1本欠けただけで噛み合わせがおかしくなる、非常にデリケートなものです。ましてやむし歯でもない健康な歯を抜くのは抵抗があるものです。抜かずにすむのなら、それに越したことはありません。
たとえば、矯正治療で歯を抜く場合、基本的には左右対称に抜くため、わずか3、4ミリの隙間のために2本の歯を抜く必要があります。その結果、歯が内側に倒れ、筋肉が緊張し頭痛を引き起こす場合もあります。また、顔の筋肉が収縮し、顔のラインが細く不自然になってしまう場合もあります。一方の歯科医院では歯を抜くと言われ、他方では抜かなくてもよいと言われることがあります。
これはなぜでしょうか?
それは、これまでの矯正治療は基本的に、きれいに並べるために歯を抜いて、スペースを確保する治療だったからです。 通常、矯正治療を行う際、最初から歯を抜こうと考えることはありません。どうすれば歯を抜かずに治療が出来るかと考えます。そのためには、凸凹な歯をきれいに並べたり、出ている歯を引っ込めるために、どこかに隙間を作ることを考えます。そこで以下のT〜Vのように、歯を抜かない方法をご提案しております。
ただし、必ずしも全てを行うわけではありません。
T、奥歯(最遠心臼歯)の移動
奥歯である、第一大臼歯あるいは、一番奥の歯である第二大臼歯をさらに後方に移動させます。もちろん、後方に移動できる量も限界がありますので、後方にスペースがある場合が適応となります。またインプラント矯正を用い、効果的に歯を移動することで治療期間を短縮することが可能です。

U、全体の歯並びを側方へ移動
拡大装置も用いて、臼歯部を横に広げて、スペースを作ります。
ただし過度の拡大は治療の後戻りの原因となったり、臼歯部で噛めなくなったりする可能性もありますので、拡大出来る量には限界があります。

V、歯の間を削って隙間をつくる
歯の表面はエナメル質という固い組織でコーティングされています。
この歯の表面のエナメル質の部分を若干削って、隙間を作ります。ディスキング、スレンダライジング、あるいはストリッピングと呼ばれ、すきまを作る以外にも後戻りを防ぐ手段のひとつとして矯正治療では用いられることがあります。 削った後、きれいに研磨することにより、むし歯や知覚過敏等を防ぐことが出来ます。

矯正治療において、歯を抜くことはは出来るだけ避けたいと考えております。
できる限り患者さまの歯を抜かないで矯正治療を行っています。しかし必ずしも、抜かない矯正だけがすべてではありません。基本的に抜かない矯正を希望するのであれば、子供の成長期に矯正治療を行うことが理想的です。骨格を形成する時期から、しっかりと矯正治療を行うことで、歯を抜歯するリスクは軽減しますし、発育を最大限に利用することもできます。
患者さまが歯を抜きたくないという希望をお持ちの場合には、できる限り希望にそえるように努力します。
しかし一見、自然な方法のように見える歯を抜かない矯正治療も、実際のところ、長い将来という期間で考えると、かえって歯そのものにダメージを与えることもあります。その場合は、必要最低限の歯を抜くという選択も間違いではない、ということをご理解いただければと思います。
歯を抜く、歯を抜かないというのは、単純にどちらが良いという問題でなく、患者さまの現状や状況、そして将来の見通しまで検討し、総合的に判断することがとても重要だと考えております。